お焼香を故人の自宅に伺って行うことを「弔問(ちょうもん)」と言います。
弔問は、葬儀場でお焼香を行うことよりも余計に緊張して、マナーも目立ってしまうもの…
遺族のご自宅に伺うので、タイミングも気を使わなければなりませんよね。
そこで今回は、「自宅で行うお焼香のやり方や弔問の基本的なマナー」を紹介します。
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この記事の目次
お焼香を故人の自宅で! 「弔問できる時期はいつまで」というマナーがあるの?
訃報を聞いて故人のお通夜かお葬式に参列してお焼香をするのが一番ですが…
お通夜やお葬式にどうしても参列できない、という状況も場合によってはあるものです。
例えば、自分自身が病気で入院中であるとか、海外など遠く離れた場所にいるなど…
そのような場合は「弔問(ちょうもん)」という形で、遺族の自宅に伺うことになります。
急に伺うことは失礼になるので、遺族に必ず事前に連絡をして、日程や時間を決めて弔問しましょう。
ところで弔問の時期は、「通夜前」と「葬儀の後」ではどちらがいいでしょうか?
結論から言うと、「通夜前には遺族の自宅を訪問しないこと」がマナーです。
一般的に葬儀の前に弔問するのは、生前の故人と「非常に親しい間柄」だったという場合だけ。
なぜなら大切な人を失ったばかりの遺族にとって、葬儀の前に弔問客の応対など簡単にはできません。
また翌日から始まる葬儀の準備などで、ほとんどの場合、遺族はゆっくりする時間もないのが普通です。
ちー婆(ばぁ)も葬儀の打ち合わせに追われて、哀しむ間もないくらいの慌ただしさでした。
訃報を聞いて、どうしても気持ちを伝えたいというのであれば「弔電」を通夜前に送るといいかと思います。
直接対応しなければならない「電話」は、遺族の気持ちを考えると、できれば遠慮するのがマナー。
遺族にとっては、通夜や葬儀前の時間は、故人とゆっくりと過ごせる最後の貴重な時間だからです。
次に「葬儀の後に遺族の自宅に伺う時期」ですが…
これもいつでも良いというわけではないですよね。
例えば、葬儀が昨日ようやく終わって、ちょっとほっとしている遺族の自宅にすぐ伺うのはどうでしょう?
やはり、「葬儀の後しばらく(3日後くらい)経った時期」がマナーとしていいかと思います。
しかし、いつまでも弔問が続くと遺族にとっても大変なので…
一般的には「葬儀後四十九日頃まで」と言われています。
四十九日は、仏教の法要の1つです。
故人の魂が、この世からあの世へと移り、遺族にとっても故人との哀しい別れの一区切りになる時期です。
弔問をするなら四十九日の時期までに、遺族の自宅に伺ってお焼香をあげるのがいいと思います。
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分かっているようで分かっていない?遺族の自宅でお焼香をあげるときのやり方と作法
お焼香には「抹香焼香(まっこうしょうこう)」と「線香焼香(せんこうしょうこう)」があります。
抹香焼香は、粉状になったお香を使うお焼香で、通夜や葬儀で一般的に行われる焼香のやり方です。
線香焼香は、お香を棒状にした線香を使うお焼香で、自宅で行う日常のお参りや法要などで見られます。

今回は、葬儀後に故人の自宅へ弔問したときにお焼香する「線香焼香」の仕方を紹介します。
お焼香をあげる前の作法と注意点
1.仏壇の前に座布団がある場合は、お焼香をする前に座布団の横に座り遺族に座礼します。
2.「座布団には座らない」のがマナーなので、座布団は横に寄せます。
3.仏壇の正面にむかって正座をし、故人の遺影やご本尊に向かって座礼します。
線香焼香を行う作法と注意点
1. 線香は、必ず「ろうそくの火で着火」します。
線香に直接マッチやライターで火をつけるのはマナー違反です。
もし、火が付いていないときは…
遺族の方にひと言断ってマッチやライターで、ろうそくに火を付け線香に着火します。
2.線香は基本的には「1本あげる」という宗派が多いですが、宗派によっては3本線香をあげることも。
自分の宗派に従って、線香の数は決めるといいと思います。
3.線香の火が大きくなりすぎて、消さないといけないときは…
線香に手で風を送って火を消すか、線香を軽く振って火を消すようにします。
仏様に供えるお線香の火を息で吹き消してしまうのは、「人の汚れが付く」と言って、どの宗派でもよくないとされています。
4.しっかりと火が付いた線香は、基本的にはそのまま香炉(こうろ)に立てます。
しかし浄土真宗や真宗では、一本の線香を折って火をつけ、香炉に寝かせて置きます。
寝かせて線香を置くことが、より抹香と同じような状態になると考えられているからだそうです。
お焼香の後の作法と注意点
1. リン(鐘)を鳴らす時は、「リンの内側の淵あたりを外に向かってたたく」と良い音が出ます。
リンを強く上からたたくことは、リンの頭をたたくことになるのでマナー違反。
ちなみに、仏壇においてあるリンは、お経が始まる合図として鳴らすことが一般的ですが…
弔問では、仏様への挨拶代わりに鳴らす意味も地域によってはあるそうです。
2. 合掌して心の中で祈り、遺影に向かって座礼します。
3. お焼香がすんだら、座ったまま遺族の方に向き直り座礼しましょう。
日常のお参りだけでなく、お盆や初盆(はつぼん)、初七日(しょなのか)、命日といった法要でも一般的によく使われる線香。
線香の煙で心身を清め、香煙を通して仏様と心が通い合うという意味合いもあります。
心のこもったお焼香をしたいですね。
参考記事⇒お通夜や葬儀でのお焼香の仕方は?喪主/遺族/親族/参列者で礼や作法が違う!?
お焼香を故人の自宅で! 自宅に伺ってから帰るまでのマナー
「自宅で行うお焼香のやり方」と「注意するべき点」について分かっていただけましたか?
次に、遺族の自宅に伺ってからお焼香を終えて、帰宅するまでのマナーについて紹介します。
まず、遺族の自宅に着いたら、玄関先でお悔やみの挨拶をします。
お悔やみの言葉としては、「この度はご愁傷様でした」というような簡単な挨拶で十分です。
大きな声ではっきりというよりも、できれば遺族がはっきりと聞き取れないくらいの小さな声で言うのがマナー。
そして遺族が「どうぞ」と声を掛けられてから、靴を脱ぐようにしましょう。
遺族や仏様に「お尻を向けない」ように正面からそのまま上がって靴を脱ぎます。
脱いだ靴をそろえるときにもお尻を向けないように、体を斜めにしてかがみ靴を直しましょう。

この時、靴のかかとが自宅の中に向かないよう、靴箱などの前にかかとを付けて置きます。
靴のかかとは、人でいうとお尻になるので、遺族や仏様にお尻を向けないのと同じ理由です。
自宅の部屋の中に入るときは、「ふすまや畳のヘリは踏まない」のがマナー。
これは弔問する場合だけでなく、他人の自宅を訪問するときのマナーとして昔から言い伝えられていますよね。
お焼香を済ませたら、故人との想い出を少し話すくらいにして、できるだけ「長居をせずに帰る」のがマナーです。
遺族の方の負担を考えると、そんなにいつまでも自宅にお邪魔することはできませんよね。
帰るときには、最後にもう一度「何かお手伝いできることがあれば…」など遺族を励ます一言を添えると親切です。
お焼香をあげることは、特別な作法です。
しかし、ここで紹介したマナーは、日常的に自宅を訪問するときにも知っておくと、役に立つマナーだと思います。
伺う時には、自宅の方の立場になって、考えて行動することがとても大切ですね。
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遺族の自宅でお焼香をするときの服装は?私服でも大丈夫?持っていくものは何?
お葬式には喪服を着るのが常識ですよね。
しかし、急な訃報を受けてすぐに自宅に伺う場合は、きちんとした喪服を着ていると遺族に対して失礼になることが…
きちんとした喪服で伺うと、故人の死を予想して準備していたかのような印象を、遺族に与えてしまうからです。
なので、お焼香をさせてもらうだけに自宅に伺うならば、私服でも構いません。
しかし、私服でも構わないと言っても、どんな服装でもいいというわけではないですよ。
見た目が派手で華美な印象を与える服や、Tシャツにジーパンなどカジュアルすぎるのはマナー違反。
葬儀の後に行く場合も、男女とも黒や紺、グレー系の色で、地味な感じの服装がいいと思います。
女性は、アクセサリーなどは、何も付けないほうが無難です。
自宅に遊びに行くわけではなく、「お焼香をあげさせてもらうために伺う」ということを考えた服装にしましょう。
■参考記事
⇒お通夜に参列する女性の服装は?葬儀での鞄・靴・アクセサリーのマナー
⇒お通夜(葬式)に参列する服装【男性】 仕事帰りの私服スーツも黒色が常識!
次に持っていくものについてですが…
お通夜やお葬式に参列するときと基本的にはほぼ同じ持ち物で大丈夫です。
どんなものが思いつきますか?
- 数珠
お焼香をするときは左手で持っているのがマナーです。
葬儀後に自宅に伺うときも、同じように数珠は持っていくのがベストです。
■参考記事
⇒お通夜(葬儀)の焼香で数珠を持つ意味と持ち方 ないのはマナー違反?
⇒お焼香で持つ数珠の選び方の基準って?迷わないための5つのポイント
- 香典

一般的には、お通夜やお葬式に参列したときに遺族に渡すものですが…
参列できなかった場合は、遺族の自宅に伺うときに持参しましょう。
香典の表書きは、四十九日前に伺うときは「御霊前」、そのあとの場合は「御仏前」となります。
香典は故人に対しての物なので、遺族に直接渡すのではなく、お焼香をする前に仏壇に置くのがマナー。
- 手土産
お土産は、必ず必要というものではありません。
持参する場合は、故人の供養のためのお供え物として、個人が好きだったものなどをお土産にしてもいいかも。
また、遺族の方に向けての手土産ならば、お菓子など少し日持ちがするものがいいかもしれませんね。
お供え物には、黒の「のし」を付けて、御霊前または御仏前と上に書き、自分の名前を下に書くのがマナーです。
仏壇に飾る花の場合は、あまり派手でない菊やユリなどが一般的です。
どの手土産にしても、香典と同じように、お焼香を上げる前に仏壇に置きましょう。
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まとめ
今回は、遺族の自宅でお焼香をするときに気を付けたい基本的なマナーや作法について紹介しました。
お通夜やお葬式に参列できなかった場合は、遺族の自宅へ直接伺うことになりますが…
生前の故人や遺族と親しい間柄であっても、お焼香が目的ならば、普段通りに自宅に伺うことは難しいことです。
「親しき仲にも礼儀あり」と言う諺があるように、マナーや作法には、いつも以上に配慮できるといいですよね。
残された遺族の気持ちを十分に考えた心からのお悔やみをすることが、故人にとって一番の供養になるのではと思います。
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